下駄の選び方―丸屋履物店

下駄の選び方

形で選ぶ

下駄の形は大きく分けて3種類。
二枚の歯がついているいわゆる「下駄」のイメージの【駒下駄】
二枚歯の前歯がナナメに切り出された【のめり】
草履のような形をしている【右近】
それぞれの特徴をご紹介しますので、自分のスタイルに合った形を見出してください。

形の違い

駒下駄

駒下駄について

最も基本的な下駄の形です。 【Q2.初心者にお勧めの下駄(雪駄・草履)はありますか?】でも紹介していますが、当店ではまずは駒下駄からお勧めさせて頂いています。和装履物の基本となる下駄です。
基本形となっているだけあり、形の違いや塗り・焼きなど、選択肢が広いのもお勧めさせて頂くポイントになっています。
どちらかというと少し履きこんでから真価を発揮するタイプで、少し歯が減ってきてからグンと履きやすくなります。
その履き心地はのめりと比べても差はありませんが、駒下駄の方が木の量が少ない分、軽いというのが特徴です。
寿命は歯が極薄くなるまでで、本当に平になるまで履く方も多い下駄です。

のめりについて

駒下駄の前歯が斜めに切り出された形。 下駄は前に倒して歩くため、より前に倒しやすいように歯の形を考えられた下駄です。 駒下駄は少し歯が減ってから歩きやすくなるのに対し、のめりは新品の状態からパフォーマンスを発揮する形になっています。しかしながら、どうしてもやや重めになりやすいのと、形的に花緒の前壷を痛めやすく花緒の素材が強くなっている現在でも花緒(前壷)が切れる可能性を残す形です。 また、のめりの代表的な下駄【千両】は【千両役者】からその名が来ているとされ、【江戸っ子は常に履物を新しくしていた】という事もありますので【初めから歩きやすい】という利点が通人に長く愛されてきている理由だと思います。

のめり下駄

右近下駄

右近について

背の低い形に底はスポンジが張られた近代的な形の下駄です。
「歩く」というよりも「立つ」ということに重点を感じる下駄で、立ち仕事をされる方などが履く事が多い下駄です。
下駄を履いた事が無い人から見ると口を揃えて「履きやすそう」と言うのですが、歩きやすさで言うと一枚劣るように思います。
しかしながらスポンジ底のグリップ力はデパートなどの滑りやすい床には有効です。
背が低いので目線も靴やサンダルと変わりなく、最も違和感は無いと思います。
取り扱うお店も多く、現代においては「今最も見かける下駄」かもしれません。

見た目で選ぶ

下駄は仕上げ方によりその見た目(色合い)が異なります。
白木・焼き・塗りなど、細かく一つ一つ見ていくとキリが無いほど加工種類は多いです。
豊富な仕上げ方の中から「こんなの履いてみたい!」を見つけてみると良いと思います。

種類別紹介

白木白木

白木は最もシンプルな仕上げ方。
下駄の材料である桐の質感や風合をそのままに、砥の粉を掛けいぼた蝋と浮造りで磨き上げた一品です。
最も下駄らしい仕上げといえ、足当たりも桐そのものの感触を味わえます。
また、汗などの水分も吸ってくれるため、履き心地も常にサラッと気持ちが良い仕上げ方です。

夏色夏色

当店独自の仕上げ方。
通常の白木の仕上げ方と同じですが、砥の粉に墨を加えるため仕上がりが黒っぽくなります。
その分雰囲気が渋く仕上がり、素足で履いた時にもあまり汚れが目立たないなどの利点があります。
履き心地も白木と全く同じ感触を得られます。

焼き焼き

文字通り下駄を焼いたもの。
表面を焦がすほどにバーナーで炙り、煤を落とし磨き上げ仕上げます。
焼き色のついた台は汚れが付きにくく、素足で履く場合でも汚れが気になりません。
そのため、普段履きとして扱われる事が多く、気軽にお履き頂ける仕上げ方と言えます。

捌き捌き

昔から親しまれる塗りの下駄です。
捌きというのは木目(柾目)を出すために薄く塗料を重ねた塗り方のこと。
塗下駄は上品なイメージもあり、はたまた、浴衣に合わせて素足でというのもあり、履く方によって履く場面も異なってきます。また、水分を弾くため雨の日にも強い味方になります。

大艶大艶

捌きとは対照的に木目がない塗りもの。
下地からしっかりと塗っては研ぎ、塗っては研ぎを繰り返し、最後は塗り立てで艶を出し仕上げとします。
捌きと比べると艶が強く、どちらかといえば派手な印象になります。
履いている時にはわかりませんので、脱いだ時のお楽しみといった所でしょうか。

鎌倉彫鎌倉彫

下駄に鎌倉彫を施した台。
単純に無地に塗った物と違い柄を楽しめるのも特徴。
基本的には一色の物ですが、中には色差しと言って多彩に塗り分けた物も。
高価な物であっても正装というわけにいく品物ではないので、ここぞのお洒落に出番という下駄です。

津軽塗津軽塗

何層にも漆を重ね研ぎ出す事で模様を出す唐塗りを筆頭に様々な変わり塗りがあります。
こちらも鎌倉彫同様、いくら高価なものでも正装には向かず、ここぞのお洒落の出番待ち・・・
履くのに惜しいぐらいの「作品」に近い下駄が多いです。

胡麻竹胡麻竹

その名の通り台に胡麻竹を張り付けた下駄。
胡麻竹を張ることで見ても履いても涼しい夏の下駄となるわけです。
実用的な部分でも胡麻竹は優秀で、汚れが付きにくく、素材も強いという要素があります。
憧れの夏下駄といったポジションでしょうか。

表付き表付き

下駄の台に畳表を張りつけた台。
下駄というのはどこまでいっても普段履きという印象が強いですが、こういった畳表の下駄は十分に正装に成り得ます。 もちろんその場面のみならず、普段にお洒落履きに結構と幅広く履かれる下駄です。
すげる花緒によって表情が変わってくる事もあり、一足台を持ち、花緒をすげ替えて使うのも手です。

TPOで選ぶ

下駄はどちらかといえば普段履きという印象ですが、もちろんフォーマルにも履ける下駄もあります。
種類別紹介でも触れていることもありますが、ここではTPOの観点を重視してみていきます。

普段履きは気楽に履く!

一般的に普段履きとして大事な要素はコストや手間が掛からないなどの「気楽さ」だと思います。
その点を考えると、白木や当店オリジナルの夏色などはコスト的にも優秀で、桐本来の質感を感じられる確かな履き心地があります。
白木を素足で履くと足跡がつくのが嫌、という方は焼き夏色などの台に色の付いた物なら、汚れが目立ちにくくメンテナンスフリーの「気楽さ」が体感できると思います。

下駄のクラスとしては歯が糊付けの天一【てんいち】で十分です。

お洒落履き(よそ行き)は凝った物を

あくまでお洒落ですから着物だけでなく下駄屋としては足元にも凝って頂きたいところ。
真角や三味形などのいつもとは違う形にしてみたり、鎌倉彫津軽塗などの職人の手の込んだ物にしてみたり、花緒に凝ってみたり、白木は白木でも柾にしてみたりなど。
いつもとは(普段履きとは)違う部分を作ってやると「よそ行き感」が出ると思います。
そうすることで気持ちの上でもビシッと決まる事でしょう。

真角&三味真角&三味

通常下駄というと角を丸めた形が多いですが、敢えて角張らせたままなのがこの真角と三味形です。
「人と違った物が履きたい!」というのはどの時代の人も同じようで。
夫婦・カップルお揃いで履く方も。
お洒落は足元から主張するぐらいの方が素敵だと思います。

柾柾【まさ】

柾目を贅沢に出す事を「柾」と言い、白木の下駄の最高の作りです。
こちらの画像は背中合わせに木取をする「合目【あいめ】」と呼ばれる作り方で、背中合わせに取る事で左右対称に柾目が入る最も美しい下駄の取り方。
白木は白木でも素材の違いで差をつけてみるというのはいかがでしょうか。

花緒花緒

「花緒は細い方が粋だ」とはよく言われること。細くなければいけないというわけではありませんが、ふと見比べた時に花緒が細い方がスッとスッキリと見せる効果があります。
素材も印伝・ホースヘアー・刺繍などなど。花緒は一番のアピールポイントになりますよ。

昔はレストランやホテルなどで「下駄NG!」という気取った所もありましたが、今ではあまり聞かなくなりました。(それでも所によりあるようです)
確かに、絨毯などが敷かれた上を下駄で歩くのは少々木屑が気になります。
そんな所へは「ダメ!」というのではなく、こちら側の気遣いとして右近などのスポンジ裏のついたものが良いと思います。(もちろん、雪駄草履もOKですが、ここは下駄の紹介ページなので割愛・・・)

正装には決まりものを

正装となると特別な下駄になります。
表付でも表は編み目細かい南部表、台には会津桐の横柾の通った物がベストです。
女性物の中にはぽっくりなども正装にあたります。
表付の側面を塗りや蒔絵の施された物も素敵です。
花緒は男性の場合は白、もしくは黒花緒。
女性の場合は金襴や帯地などの金や銀が入った華やかな花緒が似合います。

横柾横柾

畳表を張ってあるため、上面に柾目を出しても意味がありません。
そこで側面に柾を出すことで柾目の美しさを出す作りを「横柾【よこまさ】」と言います。
この横に走った柾目が良質な下駄の証。
正装などの場面ではこういった物をお履き頂くのが望ましいです。

ぽっくりぽっくり

ぽっくりというと七五三のお祝いに履く下駄、というイメージですが、これは立派な女性の正装になり得る履物です。
なかなか履く方も出回る品物も少ないですが、こんな選択肢だってあるんだよ、と伝えていきたいモノです。
今は舞妓さんのイメージが強いかな・・・?

蒔絵付蒔絵付

蒔絵を施した物も当然、といいますか素敵です。
表付の側面を「どのように見せるか」を考えられた品物はそれだけで美しく、横柾でなくとも、塗り物の場合はそれ以上に上品に見えるように思います。
柄も楽しめることもあり、よりオリジナリティーが出る履物です。

目次

下駄の選び方

形で選ぶ

見た目で選ぶ

TPOから選ぶ

雪駄の選び方

畳表の違い

雪駄の種類

作りを知る

草履の選び方

作りで選ぶ

素材で選ぶ

TPOから選ぶ