黒捌き芳町下駄×扇柄花緒
黒塗りの下駄に合わせる派手目な花緒~というところでポップな配色ですが、古典的な扇柄、というのが楽しい花緒だと思います。
浴衣にプラス扇子、は自然な組み合わせではないでしょうか。
焼き相右近下駄×紅型花緒
カジュアル重視の焼きの台。
安定感を重視して右近下駄を選ぶのもアリだと思います。
お決まりの焼き下駄に紅型花緒を合わせてみました。
寒い時期になってきて、皆さん着物でお出かけしようか、という季節になってくると専門店の方ではようやく草履の季節!とばかりに準備を始めます。
着物には草履!というイメージが強くあり、そのイメージ通りに草履を履く方が多いです。
それと同時に「着物に下駄っておかしいですか?」という質問も多く頂きます。
着物=草履のイメージが強いのと同時に、下駄=浴衣、のイメージも強いんですよね。
なので下駄は浴衣にしか履けないもの!と考えている方もいらっしゃいます。
この内容がそんな質問に対する答えとなればと思います。
慶応元年創業 和装履物処「丸屋履物店」 6代目店主 榎本英臣
・コスト面の比較
・耐久性の比較
・クッション性の比較
・重さの比較
・雨天時に履けるか
結論からいきますと、着物でも下駄。十分有り!です。
基本的には自由に合わせて頂いて良いと思っています。
個人的には普段使いとするには草履よりも下駄の方がむしろ優れているように感じます。
下駄と草履の違いについて思いつく要素を比較してみますとこんな感じです。
傾向として、下駄の方がコストを抑える事が出来る。
草履よりも軽くて履きやすい。
雨にも履ける。
というメリットがあります。
草履の方は踵を打ち替えたりといったメンテナンス性
クッション性があり足に優しい、というのが特徴になります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
まず第一にコスト面。
これは下駄の方が価格として抑えられます。
当店の場合、女性物のラインナップで5000~6000円ぐらいのご予算でも選択肢を多めにご用意しています。
黒塗りの下駄に合わせる派手目な花緒~というところでポップな配色ですが、古典的な扇柄、というのが楽しい花緒だと思います。
浴衣にプラス扇子、は自然な組み合わせではないでしょうか。
カジュアル重視の焼きの台。
安定感を重視して右近下駄を選ぶのもアリだと思います。
お決まりの焼き下駄に紅型花緒を合わせてみました。
それに対してしっかりした草履となりますと10000円ぐらいが一つの目安となってきます。
気軽に履けるカジュアル草履が合皮の台が6000円+花緒代。
これが当店おススメの1つのスタイルです。
万能に使いやすく・・・ということですと、
やはり「革草履」の方が良く、お値段的にも2万円前後ぐらいの仕上がりになる事が多いです。
下駄でも草履でも、台を選んで花緒を選ぶ、というスタイルに変わりありません。
お好きな組み合わせで足に合わせる事が可能です。
5000~6000円で自分好みのセミオーダーメイドが可能な下駄って、なかなか優秀だと思うのは自分が下駄屋だからでしょうか?
次に耐久性。
これはメンテナンス性に優る草履に軍配が上がります。
下駄の場合はスポンジ張りされているものもありますが、基本的には歯をすり減らしていき歯が平になったところで寿命となります。
毎日履く方でおよそ2~3カ月が目安となるかと思います。
ちょっと短く感じるかもしれませんが、週1の着物生活で下駄履きとした場合、毎回同じ下駄を履いたとしても1年は持つようなイメージです。
それに対して草履は・・・と言いますと、踵ゴムの打替えという寿命を延ばすメンテナンスがあります。
減りを気にして頂く必要はありますが、減った頃に打替えて、といったメンテナンスをして頂ければ
お仕事履きとして履かれている方以外にはなかなか履き切った草履を見かける事は少ないです。
次にクッション性。
下駄は木の履物ですので、クッション性は全くありません。
逆にダイレクトな感触を感じる事が出来ると考えて頂いた方がいいかもしれません。
草履に関してはほとんどの草履がクッション性のある素材を包み込んだ構造をしています。
最近では低反発といったクッション性をさらに高めたものも多く見かけるようにもなりました。
草履のクッション性に関しては長時間立ちっぱなしなどの着用シーンにおいては心強い味方となるように思います。
次に重さ。
履物そのものの重さについてはほとんどの場合、下駄の方が圧倒的に軽いです。
二枚歯の下駄については草履の半分ぐらいなんじゃないですかね・・・
と、原稿を書いていて少し気になったので、実際に測ってみました。
草履にしても下駄にしても自然素材を含み個体差がありますが、一つの目安程度に見てみてください。
いずれも片足の重さです。
木なので個体差はありますが、草履よりも下駄の方が軽いというのは言えると思います。
この軽さは当然履き心地に関係してくると思うのですが、いかがでしょうか?
実際店頭で手に取って頂くと・下駄って軽いんですね、という反応を頂く事が多いです。
次に雨天時。
これは注意して頂きたいのですが、草履は基本的に雨の日NGの履物です。
底から水を吸い上げてしまうと、内側から脆くなっていってしまい、最終的には履けなくなります。
乾かしても、変形して固まってしまう場合が多いです。
なので、草履を雨に履くときは草履カバーを使用するようにしましょう。
雨草履、という雨の日用の草履というのも存在しています。
それに対して下駄はどうか、と言いますと、雨に濡れて履けなくなるといった事は起こりません。
和装履物では雪駄も草履も水に弱く、基本的には雨の日は下駄を履け!と言われてきたようです。
雨の日を想定した雨下駄というのは塗り下駄の二枚歯、と決まったスタイルなのは、
塗りを施す事で水を弾くようになり、二枚歯のスタイルは水ハネを上げにくく、着物を汚しにくい、というメリットがあるからです。
白木であっても履物の寿命を縮めるような問題はないですが、少々シミになりやすくメンテナンスが厄介かもしれません。
これらが草履と下駄の機能的な違いになるかと思います。
あとはTPOといいますか、皆さん気になるのは着物との兼合いだと思います。
丸屋HPにある和装履物のTPO(女性編)から画像を引っ張ってきますとこんな感じです。
下駄は下駄でも色々でして、加工を工夫した下駄はむしろお洒落履きにはもってこいの存在になります。
もちろん台の工夫だけではなく、花緒で洒落て頂いても良いと思います。
一応ここでは下駄を主役においていますので、下駄の例を中心にご紹介させて頂きます。
基本的に下駄の形はTPOには関係ありません。
二枚歯・のめり・右近・舟形といった形での使い分けはありません。
ただ、ホテルや美術館などで木がむき出しの二枚歯やのめりといった形は音の面・絨毯などを傷にするなどの面であまり好まれない傾向にあります。
入場規制される、というほどではないとは思いますが、こちら側の気遣いとして避けた方が無難という事が言えるかもしれません。
あとは仕上げ方になります。
フォーマル格にもなる表付きは少々別格扱いですが、その他はお洒落履き・普段履きの境目は感じません。
ただ、焼きの下駄に関しては本当に普段使いといった印象になるように思います。
素足で浴衣に~といったイメージがまさにこの焼きのイメージです。
また、草履でもそうなのですが、花緒との組合せでも全く表情が変わっていきます。
例えば黒塗りの台に万筋の正絹花緒・・・なんかもとても使いやすい組合せになると思います。
当店では定番花緒としてご当地木綿を集めてシリーズ化していますが、
遠州綿紬・会津木綿・亀田縞といった花緒も普段使いにピッタリの花緒としてご好評いただいております!
この辺りは手持ちの着物や帯などと相談しながら組合せていくと良いと思います。
最後になりますが。
下駄=浴衣、のイメージがあるのは下駄がカジュアルな印象が強くなるからではないでしょうか。
実際、和装に関心の無い人にとって、着物=フォーマルな場面で着るもの、といったようなイメージもあると思います。
そういった場面では確かに下駄を合わせる事は非常に少ないです。
しかし、この動画をご覧頂いている方はお普段からお洒落に和装をされている方だと思います。
そんな日常的な和装にはむしろ下駄はピッタリだ、ということを言いたいわけです。
いつも例に出してしまうのは二枚歯の下駄なのですが、
着物がまとわりついて歩幅が制限される和装時でも歩きやすいようによく考えられたスタイルだと思います。
前に倒れてくれることで、足が捌けるスペースが取れるんですよね。
これは着崩れ防止にもつながるように思います。
是非一度、気軽に下駄を合わせてみる、というのもおススメですのでお試しください。
最後までご覧頂きましてありがとうございました!