会津桐のこだわり ―丸屋履物店

会津桐のこだわり

日本一の桐・会津桐

日本一の桐の産地・会津。
豊かな土壌と、夏は暑く冬は厳しい寒さとなる会津盆地特有の気候が桐に適しているため、会津の桐は「会津桐【あいづぎり】」と呼ばれ一級品の桐として扱われています。
そんな会津桐で作られた下駄が、当然下駄の中でも最も価値のある下駄となるのは言うまでもありません。
軽く、硬いという桐そのものの特徴や、木目がハッキリと表れる点も下駄材として優れた所です。

山際育ちと田畑育ち

会津桐の植林される場所としては大きくわけて2つ。
一つは会津盆地を囲む四方の山際に桐を植えるパターン。
もう一つは田畑の横に、つまり農家さんが桐を植えるパターン。
どちらがより良い桐になるのか、これは一概には言えないそうですが、傾向として山際に生えた桐は細く木目の詰まった桐となり、平地に植えられた桐は太く木目が均等に入った桐となるそうです。
生産者がしっかりと手入れをし栄養が多いと成長が早くなり、太くなるが木目の間隔が開いてしまう。
逆に雑草など他の植物との栄養の取り合いとなる山際育ちは栄養が少なくなるため、成長が遅く、細いが、木目が詰まる。
また、山際の場合、日光が均等には当たらないため、その影響による個体差が生じることになってしまう。

実際に伐採するような木になるには、農家さんが手入れをしつつ育てても30年以上。
山際に植えた桐で良い下駄を採ろうとすれば60年は掛かる・・・・と。
良い、とされる下駄はわずか10cmほどの幅に20~30本の柾目が入る、ということから考えると・・・気が遠くなってしまう。

伐採は秋~春

下駄の材料として考えたとき、いつでも木を切ればすぐに使える、というものではない。
伐採の時期は落葉をしてから、新芽が出るまで、と決まっている。(養分を吸い上げない時期)
期間としては秋~春になりますが、実際は冬の間は雪が積もってしまって作業にならないため、落葉直後か雪解け後~新芽が出るまでの短期間勝負。
その時期は休みもなく毎日のように伐採をしなくては間に合わない、というほどに忙しい。
というのも、伐採した木をその年に使うわけではなく、後述する様々な工程を経て2~3年後になってからようやく材料として扱われるようになるため、使う頃になって「材料がありません」という最悪の事態を避けるために、余裕をもって確保する必要があるのだとか。


木を切る

今回伐採に立ち会えたのは農家さんの桐林。
先に様子を見せてもらった山際の桐と比べるとしっかりと太く真っ直ぐな印象でした。
せっかくの桐を伐採の段階でキズモノにしてしまわぬよう、細心の注意を払いながら作業は進んでいきます。

枝を切り落とす

幹を切り倒す前に枝などの余分を丁寧に切り落としていく。
これは切り倒した際に枝などが引っ掛かったり、枝をキッカケとして割けてしまうのを防ぐため。
数十年をかけて育ててきた桐を最後の切る段階でキズモノにしてはたまらない。
最後の最後まで気を抜かず、桐と向き合うことが大事なんだとか。

切り倒す

枝を切ってサッパリとした桐を切る。
伸びている方向や周りの状況から倒す方向を定め、根本から刃をいれていく。
一番の見せ場の工程でもあり、生産者を含め遠巻きに見守るシーンは印象的でした。
倒れると同時に皆が駆け寄り「何年だった?」と確認する。
切る前から「30年ぐらいだろう」という予想だったが、その年輪を数えるとちょうど30年ほど。
真っ直ぐに生え、年輪が均等に入った綺麗な桐だった。


丸太から下駄材料へ

伐採した丸太をそのまま製材してすぐ下駄へ加工・・・というわけにはいかず。
一度しっかりと乾燥させ、あく抜きをしてから加工へと移っていく。
この乾燥・あく抜きに2年ほどは掛かるとか・・・

まずは丸太の状態で1年

いきなり製材してしまうと狂い(反り・ねじれなど)や歩減り(収縮)が生じ、ロスが大きくなってしまうので、まずは丸太の状態で乾燥させる。
この状態で一年ほど自然乾燥させ、表皮が朽ちるほどになってからようやく下駄材料用に製材していく。

製材して輪積み、また一年

ここまでくるとイメージ通りというか、ようやく見慣れた下駄屋らしい景色に近づいてくる。
だいたいの大きさに製材し、それを輪積みといって上画像のように高く積み上げる。
この輪積みの高さが店の忙しさを表しており、製造業者同士で競い合うように高く積み上げていた時代があったというのは有名な話。
野外に積み上げ、雨や雪に晒すことでさらに乾燥を促し、木材のあくを抜いていく。
あくが表面に表れてくると木材の色が黒っぽくなってくる(上画像3枚目下のように)。
これが「下駄にして良いですよ」のサインなんだとか。
この表面をカンナで薄く漉き取ってやることで、綺麗な銀面が現れ、ようやく下駄へと姿を変えていくことになる。

こだわりの合目【あいめ】

柾の下駄はその年輪一本いくら、といわれるほど目数の多い物が良いとされ、その中でも特に良い物は「合目【あいめ】」と言って、左右対称に柾目が入る下駄。
会津の生産者達がこだわるのはその合目の柾下駄で、良しとするのは背中合わせにした時にピッタリと合うこと。
合目は合目でも2~3本ズレていたりというのは実はよくあることなのですが、会津の下駄は見事に合うように作られています。

合目の下駄は左右対称に入る木目の美しさを楽しむのはもちろんのことですが、履いてもそのメリットがあります。
左右の足に履く履物ですから、なるべく同じ素材を使いたいのは履物作りの道理。
天一などの普段履きでは同じような硬さ・重さの素材を使って左右一足としますが、それでも左右で微妙な違いが生じるのは致し方のない所なのです。
しかしこの合目の柾下駄に関しては背中合わせの木取になるため、最も左右差が表れにくく、履いて履きやすい!ということになるわけです。

合目の下駄を一足取るためには数足分の桐材の無駄が出るのですが、それでも合目の下駄を作り続けるのは良い物を履いてもらいたいから。
【これぞ、会津桐】、【これぞ、下駄】、という思いがそこにあります。