花緒の選び方を教えてください―丸屋履物店

和装履物Q&A

Q.花緒の選び方を教えてください

A.足当たりを重視して選ぶか、見た目を重視するかです

花緒選びは誰でも迷う最も大事なポイントです。
その選び方は・・・と言われればこちらも困ってしまいます・・・
大きく
・足当たり重視
・見た目重視
の2つです。
この2つの切り口から花緒選びを見ていきましょう。

解説

足当たりを重視して選ぶ

足当たりを重視する方に最もチェックして頂きたい所は、なんといっても素材です。
それも直接足に当たる裏地の素材が重要となってきます。
花緒に使われる裏地の種類はそれほど多いわけではありませんので、この際に覚えてしまっても良いと思います。

裏地素材の種類

ハイミロンハイミロン

起毛素材の化学繊維でお財布には優しいですが、足には少々硬さがあります。
と言っても履き込んでいくと意外と柔らかくなってくるので、最初の2~3回ガマンして散歩してもらえば、履きこなしてもらえると思います。
特筆すべきは、素材が強いことでしょうか。黒無地などの丸花緒は台が減ってきても花緒はヘッチャラ。という印象です。

サロンサロン

サロンビロードという、これも起毛素材の化学繊維です。
ここで紹介する中では最も新しく花緒業界へ導入された素材です。
ハイミロンと同じく最初は硬さがあるのですが、履き込んでいくと次第に柔らかくなってくる印象。
起毛の毛も長いので、しっかりと足もホールドしてくれます。

罠罠【わな】

ループ上に織られた生地。本天に次ぐ、王道の裏地素材です。
本天との違いは毛羽立っていないこと。それだけです。
生地自体が柔らかく、滑らかな足当たりになります。
どちらかというと、本天よりもサッパリとした足当たりになるため、素足にピッタリの素材です。

本天【ほんてん】本天【ほんてん】

花緒裏地代表と言って良いのが本天です。ビロードといった方が馴染みやすいかもしれません。
罠のループを切った物=本天となります。
起毛するために罠よりもさらに柔らかくなり、履き心地としては最高峰の素材です。
昔は正絹の物が主でしたが、耐久性の面でナイロン素材が優るため、現在ではナイロン、ナイロン×絹が主流となっています。

革

牛・鹿(印伝)等の革です。
昔から愛されている素材ではありますが、布に比べるとどうしても足当たりは悪くなります。
履き慣れている方にとっては革には革の履きやすさもあるのですが、あまり経験の無い方にとっては酷なようです。
しかし、様子の良い花緒は多く憧れの花緒となることが多いです。

花緒の仕立て方の違いによる足当たり

裏地の素材そのものが足当たりに関して一番の要素ではありますが、花緒の作り・仕立て方によっても変わってきます。

足当たりの良い花緒=福林花緒

足当たりの良い花緒=福林花緒

福林【ふくりん】というのは花緒の仕立て方の一つで、表に裏地が回り込むように仕立てる事を言います。
このように花緒を仕立てる事で表地が足に当たる事が無くなり、裏地のパフォーマンスを最大限に生かす事ができるわけです。

最も柔らかい裏地・本天との相性も良く、本天裏の福林花緒が最も履き心地の良い花緒だと言えます。

女性物の花緒に多い作りですが、中には男性物にも。
見た目も柔らかく仕上がる事が多いです。

見た目で選ぶ

見た目で選ぶということでしたら色や柄が大事な要素になりますが、それは人それぞれなので・・・
ここでは花緒の素材・作りの面でアプローチしていきます!

花緒は細い方が粋だ!

花緒は細い方が粋だ!

花緒と帯は細い方が・・・なんていうのはよく言われることです。
それは花緒のみに限らず履物の台にも言える事だったりしますが・・・
花緒の細さの限界点は見た目10mmほどです。
昔はもっと細いのもあった、ということですが、現在では10mmが目一杯という印象。
極細の花緒というのは仕立てるのに難しく、花緒の職人さんでも誰でも仕立てられる、というものではありません。
細花緒を履く事で貴重な技術を持った職人の仕立てた花緒に足元を支えられている、ということにもなるわけです。
もちろん見た目も良く、細身の台と合わせる事でスッキリとした印象の履物になります。
ただ、細花緒の方がどちらかといえば履き辛く、足当たりの面でもあまり良いものではありません。
逆にそこが強い憧れとなり
「あの人すごいね!あれを履きこなせるんだ!」
ということになっていくのだと思います。
また、それを目指して涼しい顔をして履きこなす姿を見せるわけです。
・・・
「粋だねぇ」となるには大変なんです。

一本どっこ花緒

見た目は良いけど・・・

見た目は良いけどあんまり足当たりはよくないよね・・・という花緒は一本どっこでしょうか。
一文字~などとも呼ばれる仕立て方で、表地の真っ二つにするラインを入れた花緒です。
ポイントになるよう、赤を入れる場合がほとんどですが、この赤がまた明るく素敵に見えるんです。
しかしながら構造上縫い目が多くなってしまい、その縫い目の多さが足当たりに少々難を残します。
「お洒落はガマン」ということで、気に入ってしまえばその足当たりは気にならないと思います。