下駄の種類~形や仕上げによる違い~―下駄コラム―丸屋履物店

下駄の種類 ~形や仕上げによる違い~

下駄にはどんな種類のものがあるのでしょうか?
男物、女物でもその形は違うのはもちろん、男女別に分けた中でも少しづつ形状は異なり、
そこには履きやすさを求めた工夫が見られたり、「人と同じものは履きたくない」といった思いから生まれた履く方のこだわりを感じるものもあります。
このコラムでは下駄の形や仕上げ(表面の加工法による見た目)の違いを重点に置き紹介していきます。

もくじ

◆下駄の天板の形について(見た目の形)

◆下駄の歯の形について

駒下駄(二枚歯)
のめり
右近
舟形
一本歯

◆下駄の仕上げの違い

白木
焼き
黒塗り
表付き(茶竹)
表付き(烏)
胡麻竹
夏色
糸春雨
市松

下駄の天板の形について(見た目の形)

ここでは下駄を上から見た時の見た目の形について説明します。

男物下駄

現在では上記の3種類が主体となっています。
大角下駄:最も幅の広い下駄の形。いわゆる下駄と聞いて思い浮かべる形です。
大下方下駄:大角の幅を詰めた形、爪先側よりも踵側を絞る事でほっそりと見せる形です。
真角下駄:真四角に形作られた下駄。角を落とすことなく、その見た目で見るものを惹きつける形です。

女物下駄

芳町下駄:基本形となる芳町の形。男物の下方と同じく爪先よりも踵側を絞る事で細身に見せる形です。
相三味下駄:三味線の胴に似せたと言われる形で、男物の真角に対するスタイルです。
小判形下駄:右近や舟形といった台に採用される事が多く、女性らしい丸みを帯びた形です。

下駄の天板の形にはTPOなどの決まりはないため、完全な好みによる選択で良いように思います。
下駄の幅については自分の足幅にある程度沿った方が花緒のフィット感が増します。
基準としては「小指が落ちるぐらいでちょうどいい」といった表現がされています。


下駄の歯の形について

ここでは下駄を横から見た時の見た目の形の違いについて説明します。
※歯の形については男女共通事項になります

駒下駄(二枚歯)

駒下駄
駒下駄

二枚の歯がある、いわゆる下駄の形です。
なによりの基本形となる形で、当店としてもはじめの一足としてもお勧めしている形になります。
どうやって歩くの?と聞かれる事が多い形ですが、簡単に表現すると「しっかりと前に倒して蹴って歩く」履物です。
そのため、画像を見て頂いてもわかりますが、歯の位置が後ろに位置してあります。(※画像右が爪先側です
この形・配置・設計こそが日本人の考え出した「履きやすい下駄の形」だと思います。

のめり

前章の駒下駄の説明でもありましたが、下駄は「前に倒して歩く履物」です。
そこで、駒下駄を始点にもう一捻りしたのがこの形です。
駒下駄の前歯を斜めにした方がより倒しやすく・蹴りやすくなるんじゃないか?という自然なアイデアから生まれた形ではないかと思います。
画像右の「小町」という形は後歯も丸く仕上げて全体的に丸みを置いた形の下駄もあります。(※後丸【あとまる】と呼ぶ方もいらっしゃいます)

右近

右近
右近下駄

どこかサンダルのような。背の低いスポンジ張りのされた現代においては最も見かける形の下駄だと思います。
専門店以外ではこの形しか売っていない・・・という声もよく聞かれます・・・
昔は流線形と言って親しまれ、もう少しRが強かったように思いますが、現在の定番スタイルに落ち着いています。
スポンジ張りされている分グリップ力に優れ、下駄を履いた事がない方にとっても違和感のない履き心地となります。

舟形

舟形
舟形下駄

女性物で近年多いスタイルの下駄です。
草履をそのまま踏襲した形で同じくスポンジ張りされた右近と比較すると、少し厚みがある分、より普段着物に合わせやすく考えられています。
履き心地にも安定感があり、こちらも安心して履ける下駄だと思います。
※舟形は女性物の下駄のみになります。

一本歯

一本歯
一本歯下駄

これは番外編になりますが・・・昔ながらの山登りの下駄になります。
通常の下駄とは構造から異なり、歯が差し歯となっています。
あくまで和装履物としての観点からいきますと、一本歯の利点は「坂道でも坂の抵抗を受けず、平坦な道同様に歩く事が出来ること」にあります。
そのため山登りなど起伏の激しい場所の歩行時に履かれる履物として定着していました。

しかし・・・近年ではもっぱら体幹やバランス感覚を鍛えるトレーニング用として履かれる方の方が多いです。


下駄の仕上げの違い

白木の下駄・塗りの下駄・焼きの下駄など、最終仕上げにより表情が決まっていきます。
その仕上げの違いについて紹介していきます。

白木

木そのものの色合・風合を最も大切にした仕上げ方。
砥の粉と呼ばれる磨き粉を掛け着色しつつ、いぼた蝋を含ませながら浮造り・瀬戸玉といった磨き道具で磨き仕上げられます。
磨きがかった白木の下駄はいぼた蝋により艶やかに。
履けばこの上ないサラッとした足当たりで、是非素足で体感して頂きたいところ。
もちろん足袋着用時に白木の下駄も問題ありませんが、素足の気持ち良さをお勧めしたいです。

焼き

文字通り焼き上げた表面の煤を磨き落とし、白木同様にいぼた蝋で磨き上げる仕上げ方。
「時代仕上げ」といった表現をされることもあり、その名の通り落ち着いた雰囲気があるように思います。
焼く事により木目がよりクッキリと表れる効果もあり、素材となる桐の表情をより強く表す仕上げ方でもあります。
比較的カジュアルに履かれる事が多く、浴衣に焼き下駄~といった気軽な場面がよく似合います。

黒塗り(捌き)

塗り下駄の中で最も多いのが黒塗りの下駄です。
現在では「捌き【さばき】」と呼ばれる表面の木目が表れる塗り方が一般的となっています。
塗り下駄は台の色が強くなるため、花緒がより映える格好となりお洒落な印象に仕上げやすく、浴衣に合わせる下駄としてのみならず、通年履かれる下駄の仕上げ方になります。
また塗り加工による耐水性の向上により、雨天時にも心強い味方となります。

表付き(茶竹)

下駄の表面に竹皮で編んだ畳表を張り付けた下駄。
和装履物の中で最も格式高い履物がこの畳表を使用したもの、という位置付けになります。
下駄というとカジュアルなイメージが強いですが、畳表の張られた「表付き【おもてつき】」は格高くワンランク上の扱いとなります。
といっても、付ける花緒によっても変化があるため「一足で幅広い用途で履ける下駄」として人気があります。

表付き(烏)

茶竹表に対して色濃く染めた烏表はカジュアル路線の表付きになります。
お洒落履きとして用いられる事が多く、一目・上級者というような印象を受けるように思います。
渋めな下駄になりやすく、落ち着いた花緒をお見立て頂く事が多いです。
隠れた醍醐味としては、贅沢に素足で履く事。
烏表なら足跡も気にならず素足でダイレクトに畳表の感触を味わうと他の下駄が履けなくなってしまうかも・・・

胡麻竹

季節物の下駄ってあるんですか?という問いに対して。
そのほとんどが通年履けるのですが、こちらの胡麻竹に関しては夏物になります。
加工としては表付き同様に下駄の表面に胡麻竹を張ったもの。
竹そのものにも季節感を感じますが、履いてひんやりとする足当たり・その涼し気な見た目から見る者を涼しくするとして夏物として親しまれてきました。
少々高級な部類の下駄になりますが、季節に履くとワンランク上のお洒落を楽しめます。


以下、少々番外編 ~当店ラインナップの紹介~


夏色

白木同様の仕上げですが、磨き粉となる砥の粉に墨を加える事で渋めに着色。
数十年と経った下駄を見ると、木の内側から滲み出るアクなどにより自然と色味が渋くなっていきます。
夏色はまさにそんな「経年変化」の先取りをしたような趣を大事にした仕上げ方。
基本的には夏場に素足で履かれるような場面に気兼ねなく履きやすいというのがポイントの下駄です。

糸春雨

落ち着いた赤を基調に黒の縞を走らせた塗り下駄。
黒が多い塗り下駄界の人気者といったポジションにあります。
この落ち着いた赤に惹かれる方は多く、派手すぎないお洒落履きとして活躍するシーンが多いです。
人と違った下駄を!といった欲求を満たしてくれる塗り下駄です。

市松

黒塗りは黒塗りでも、という塗り方です。
下地をしっかりと作り鏡面に塗った部分と、塗面を乾かないうちに叩く事で凹凸を作った部分で市松模様を表しています。
遠目にはシンプルな黒塗りに見えますが、よーく見ると浮かび上がる市松模様がお洒落です。
「よく見ると・・・」というのはまさに昔ながらの手法で通好みなところがある下駄です。


以上がおおよその下駄の種類や加工法になります。
当店ラインナップの品物もご紹介させて頂きましたが、色々な下駄屋さん独自の品物をお持ちのお店も当然あるかと思います。
お気に入りの下駄を探してみてください!

当店ラインナップは下記リンクよりご覧いただけますので、覗いて行ってください!

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